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鉄骨柱継手の構造・溶接・材料・仕口構成をわかりやすく解説

  • 執筆者の写真: 美濃部 雅尚
    美濃部 雅尚
  • 2 日前
  • 読了時間: 5分

目次

1. 継手とは何か|鉄骨柱における基本概念

鉄骨構造における「継手(つぎて)」とは、鉄骨部材を長手方向に継ぎ合わせる接合部のことを指す。特に柱は建物の主要構造部であり、1本の鋼材だけで全層を連続させることが困難なため、一定階ごとに継手を設けるのが一般的である。

継手は、

  • 建方工程の区切り

  • 鋼材の運搬可能寸法

  • 工場加工の限界長

  • クレーン能力など施工条件

によって位置が決定される。鉄骨柱の継手は、構造性能を左右する重要部位であるため、施工方法・溶接種類・材料・検査などが細かく規定されている。

また、継手は 「工場継手」 と 「現場継手」 の2種類に分けられる。工場継手は品質が安定しやすいが、運搬寸法の制約を受ける。一方、現場継手は施工環境の影響を受けやすく、施工管理が特に重要となる。

2. 柱仕口の種類と構造

「仕口(しぐち)」とは、柱と梁が交わる接合部を指す。柱仕口は、梁の応力を柱へ適切に伝達するための構造であり、建物の剛性・耐震性を左右する重要部位である。

柱仕口の代表例は以下のとおり:

■ 梁フランジ接合部

梁フランジの引張力・圧縮力を柱へ伝える部分で、

  • 完全溶け込み溶接

  • 高力ボルト接合

などが設計条件に応じて採用される。

■ 梁ウェブ接合部

せん断力を伝達する部分で、ダイヤフラムや仕口板を介して応力を伝える。

■ ラーメン構造の仕口

柱梁を剛接合し、建物全体の骨組みに耐力と変形性能を持たせるもので、日本の重量鉄骨建築で最も一般的な方式である。

継手と仕口は位置も機能も異なるが、柱継手は仕口に近い階で設けると応力が集中しやすいため、仕口から離した位置に設けるのが原則である。

3. 柱継手で使用される鋼材(SS400・SN490・STKR400・BCR490など)

柱継手に使われる鋼材は、建築構造用鋼材として JIS で規定されている。

■ SS400(一般構造用圧延鋼材)

  • 建築物から機械まで幅広く使用される汎用鋼材

  • 引張強さ・降伏強さが規定済み

  • 梁部材などに多用される

  • 比較的加工しやすい

■ SN490(建築構造用鋼材)

  • 建築用途に特化した鋼材

  • 溶接性能が良く、耐震性を考慮した規格

  • SN400・SN490が代表的

  • 主要構造部で広く採用される

■ STKR400(角形鋼管)

  • 角形鋼管として多用される

  • コラム柱として使用されることが多い

  • 仕口部はダイヤフラムを用いて応力伝達

■ BCR490(建築構造用冷間ロール成形角形鋼管)

  • 冷間成形により高い強度を確保

  • コラム柱への採用が多い

  • 耐力壁フレームなどに用いられる

柱継手では、継手部が母材と同等以上の性能を満たす必要があるため、継手部材の材質・溶接方法・板厚が厳密に管理される。

4. 溶接による柱継手の構成

柱の継手は、主に 溶接継手 が採用される。これは、柱材が縦方向の軸力や曲げモーメントを確実に伝える必要があるためである。

■ 完全溶け込み溶接

  • 母材どうしが完全に一体化する溶接

  • 鉄骨柱継手の主流

  • 内部欠陥を UT(超音波探傷試験)で確認する

■ 開先形状

開先形状は、

  • V開先

  • K開先

  • X開先などがあり、溶接施工性に合わせて設計される。

■ 隅肉溶接

  • 補助的な接合部

  • 過度なアンダーカットを避ける必要がある

柱継手は、溶接長さ・開先形状・溶接材料など、JIS Z などの規格にもとづいて厳密に施工される。

5. ダイヤフラム構造(内ダイヤ・外ダイヤ)

コラム柱の仕口部には、ダイヤフラム と呼ばれる板を設ける。梁の応力を確実に柱へ伝達するためのもので、JASS6 や鉄骨工事技術指針に記載されている一般的な構造である。

■ 内ダイヤフラム

  • コラム内部に設置

  • 見た目がすっきり

  • 施工には内部溶接が必要

■ 外ダイヤフラム

  • コラムの外側に取り付ける

  • 外観にダイヤフラムが見える

  • 溶接施工がしやすい

  • 厚板が使われることが多い

ダイヤフラムは、梁フランジ・ウェブからの応力をコラム柱へ伝えるための重要構成要素である。

6. 裏当て金の役割と使用条件

完全溶け込み溶接を確実に行うため、継手部に「裏当て金(バックリング)」を使用する場合がある。

■ 裏当て金の目的

  • 溶接裏面の溶け込みを確保

  • 溶接時の形状保持

  • 溶接金属の落下防止

裏当て金は、溶接後に残す場合と、撤去する場合がある。これは設計方針・構造形式によって決まる。

7. 梁接合部との関係(仕口条件)

柱と梁の仕口では、

  • 梁フランジの応力

  • 梁ウェブのせん断

  • 梁材質(SS400・SN490)

  • コラム柱(STKR400・BCR490)

などを基に構造設計される。

スカラップ開先は、溶接ルートの確保と施工性に必要だが、梁フランジ端部の耐力低下につながるため、不要な箇所には設けないのが原則である。

8. 超音波探傷試験(UT)の概要

柱継手など、完全溶け込み溶接を行った部位は、超音波探傷試験(UT) によって内部欠陥の有無を確認する。

UT で検出される代表的欠陥は:

  • 溶け込み不足

  • スラグ巻き込み

  • 割れ

  • 欠陥の連続(線状欠陥)

UT の合否判定は、一般に JIS Z 3060 などで規定される。

9. 施工時の注意点(隅肉溶接・アンダーカットなど)

柱継手で特に注意すべき施工不良は以下のとおり:

■ 隅肉溶接の不足

脚長不足・溶接長不足は応力集中の原因になる。

■ アンダーカット

溶接溝が削り取られる欠陥で、疲労耐久性を低下させる。

■ 溶接後の外観検査

表面割れの有無、ビード形状、スパッタの清掃状況などを確認する。

■ 熱影響部(HAZ)

溶接による材質変化が起こるため、規格に基づく適切な管理が必要。

柱継手は鉄骨構造でも重要部の一つであり、適切な施工管理と検査が不可欠である。

10. まとめ|安全で信頼性の高い柱継手を実現するために

柱継手は、建物の安全性に直結する最重要部位であり、

  • 材料(梁SS400・SN490等 柱STKR400・BCR490等)

  • 仕口構造(内ダイヤ・外ダイヤ)

  • 完全溶け込み溶接

  • 裏当ての扱い

  • 超音波探傷試験

  • 隅肉溶接やアンダーカットへの注意

など、多くの技術要素が関わる。

正しい知識にもとづき、構造設計・工場加工・現場施工・検査を適切に行うことが、安全で耐久性の高い鉄骨建物の実現につながる。

 
 
 

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